何かいやなことがあると

バスで帰ることにしている

バスは

黙って

暗い道でも

にぎやかな通りでも

連れて行ってくれる

ただ 揺られていればよい

今夜は

いつもの

どこやらの宗教団体の丸屋根が

白く光っていた

あそこは夜遅くても

玄関が開いていて

いつも

靴が数足置いてある

いつでも

来てくださいと

だれかいますと

言っているのである

隣は葬儀屋だ

どういう関係なのか

いや、たまたま

昔からそうなのか。

その隣は消防署で

灰色のシャッターが

きれいに閉まっている

夜の、バス

ものごとを言わない

運転手も背中しか見せない

わたしはだまって揺られ

外の光を眺めている

大きいひかりや

オレンジの小さな輝きや

そんなうちになみだがほろり出てきて

お腹のしくしくもあったまる

バス、に揺られる。


どうしようもなく

かなしいときには。