わたしのなかに

世の中わかったものだよ、という

魔物がいて

それはアラビアンナイトの魔神のごとく

世の中をぐるり見渡して

せせらわらっている

それは

どの人のなかにも

なにか見つけて

鋭いことを言うらしいのだが

わたしはそのことを

すごいと思うことはまず、ない。

きらり

きらり

それがどうした

魔神がいたからといって

金がもうかるわけでなし

恋人ができるわけでもなし

そいつはふだんは

わたしと二重にぶれていて

ときおり

すっと離れて

顔を出す

これがなにかの役に立つのかな

まったくわからない

しかしときおり言い聞かす

出てきちゃ、だめだよ

出てきちゃ、だめだよ

時が来るまで

しかしその時は

永遠に来ないのだ

ぶすぶす、ぶすぶす

仕方ないので魔神は

今日も古びたカーペットの上

じぶんでランプを磨いている

ぶすぶす、ぶすぶす