読売新聞土曜朝刊に載っているドナルド・キーン氏の「私と20世紀のクロニクル」はほんとうに面白い。

キーン氏は日本語の通訳として太平洋戦争に参戦(?)した。戦場で読む日本兵の手紙、日記。今回は沖縄で最初の捕虜を捕まえたことが書いてあった。その一人海軍将校がキーン氏にお互い学徒兵として話してくれと頼み、「このまま自分が生き続けなければならない理由が何かあるだろうか」と尋ねる。


キーン氏がキスカ島に上陸した米兵の一人だったことは驚きだった。キスカは、霧に紛れ米軍の到着前にひっそりと日本軍が抜け出し、犠牲者を出さなかった島である。これは以前に読んだ阿川弘之氏の「私記キスカ撤退」に詳しく書いてあった。この本はもちろん日本軍から見たキスカ撤退であるが、米軍の中にキーン氏がいたとは!


もちろん、ドナルド・キーン氏はi日本文学の研究者であり、もともと日本語が学べるために海軍語学校に行ったのである。 日本では戦争の話をあくまで日本側から記す場合が多い。特攻隊の話にしろ。そして戦争を二度と繰り返さぬように・・・と言う。


キーン氏のこの自伝がなぜ面白いかというと、太平洋戦争の激戦をアメリカ人の目から描いていること。アメリカ人も敵が恐くて仕方がなかったこと。しかも「なんだかわからないアジアの国日本」と戦うという見方でなく、日本文学に親しんでおり、日本語の読み書きができたキーン氏は、倒れた日本兵の手紙や日記のなかに、日本の日常の暮らし、日本人の心(それはアメリカ人と共通のものである)を読み取ることができた。


彼は捕虜と自由に日本語で話すことができた。彼は既に日本軍が降伏したレイテ島にも行く。そこでは日本人捕虜が大勢囚われていたが、捕虜の一人は大岡昇平だったかもしれない・・・と書く。ともかく毎回とても面白いです。